『ストレンジ ドラゴン』『花嫁と祓魔の騎士』などの作品で、恋とファンタジーの世界を紡ぎ続けてきた石原ケイコの新たな物語がここに登場!

強国に領土と民を奪われつつある小国・テュール。その片隅の村に暮らす少女・フレイヤは、病に伏せる母の看病をしながら、騎士として取り立てられた幼なじみの兄弟の帰りを待ち、三年ぶりの再会を果たした。だが彼らに課された過酷な任務、そしてフレイヤの人生を急転させる出来事のことなど、彼女には知るよしもなかった……。

衝撃の第一話、読むのは今!!

取材・文/田中香織


はじまりはノートマンガから

2006年2月に「はじまりの光」という作品をLMSへ初投稿しルーキー賞を受賞、その後2008年に「計算ですから」という作品でLMGフレッシュデビュー賞を受賞され、デビューなさっています。投稿はこれが初めてでしたか?

そうですね、「LaLa」には

「計算ですから」表紙(『敵は王サマ』に収録) 「計算ですから」表紙(『敵は王サマ』に収録)

と仰ると、その前にどこか他の賞へも応募を

その前に別の出版社で一度デビューしました。大学を卒業する前の話です

それは早い!マンガ家には小さい頃からなりたかった?

あまり意識したことはなかったんです。ただ、就職活動をする前くらいから「マンガを投稿してみたいな」と思うようになりました。なれるかどうか、確証はありませんでしたが

お絵かきはずっとお好きだった?

それはもうずっと!小さい頃はノートマンガみたいなものを描いていました

親御さんなど、近くに絵を描かれる方がどなたかいらっしゃった?

いえ、特にはいませんでした。でもマンガ雑誌は母が買ってくれていて、私に「りぼん」を、姉に「なかよし」を、という感じで買ってもらっていました。そのおかげで小さい時から、少女マンガはずっと読んでいました。ですので、マンガは好きだったんですけれど描き始めたのは誰に言われてでもなく、自分で自発的に。小学生や中学生ぐらいの時には、ノートにマンガを描いて姉に見せていました

いきなり読者がいらしたんですね!

でも姉だけに見せて、あとは誰にも秘密でした(笑)

兵庫県のご出身です。同人誌の即売会などに行かれる機会はあったのでしょうか

大阪あたりに行けば大きいものもありましたし、地方でも割と地域ごとに点々とやっていたんですが、マンガを描くこと自体が、私にとってはあまり人と一緒にやるものではなかったんです。姉が読んだらそこで完結、でした。あまり「みんな!見て!」という感じにはなりませんでした

では、中学や高校でも漫研とか美術部などに入られることは?

ありませんでした。高校では天文部。星を見ながらみんなで集まってお菓子を食べるような部活だったんですが、それが楽しくて。大学は弓道部でした。とはいえ、やはり描くことは好きだったので、なにかの形で描き続けられたらなとは思っていました


初投稿とアシスタント時代

ノートマンガの時代からずっとなにかは描いてらっしゃった?

はい。でも「誰かに見せたらどうなるのかな?」と考えるようになったのは、大学生の頃でした。いま思い返すと、それまではちょっと恥ずかしかったんだと思うんですよね。人に作品を見せたり、一緒になにかを描いたりするって、結局自分の内面を他人に見せるってことじゃないですか。それが当時の私には一番恥ずかしいことで、だから「投稿をしよう!」と思うまでには時間がかかりました。就職を前にして「投稿して批評してもらったらどうなるんだろう」「描いたこのマンガを誰かに見てもらおうかな」と考えはじめて

実際に投稿を始められてから、どれくらいの期間で受賞されたのでしょうか

たぶん1年ぐらい投稿して、3作目くらいでデビューしました

え!かなり早いですよね?

(強く頷いて)早いですね

当時と今と、画材に変化はありますか

今もモノクロはアナログで描いていますが、カラーはデジタルです

「LaLaDX 2018年5月号」巻頭カラーより 「LaLaDX 2018年5月号」巻頭カラーより

碧也ぴんく先生のアシスタントとして現場に入られていた当時のことをお聞かせください

デビューからしばらくして、就職をしました。マンガで食べていくのは無理だろうと思っていて、法律事務所の事務員として働きはじめて

マンガ家さんが、法律系の事務所で事務員……!?かなり堅めの職業との兼務、珍しいですね

そうですね(笑)そこで働きながらデビューした雑誌で描かせていただいていたのですが、その雑誌では代理原稿としての採用しかなく、なかなか正式な掲載がありませんでした。そうこうする内にデビューから随分経っていて、「もう辞めようかな」と思い始めました。予告にも目次にも名前が載らず、コミックスにもなりそうにない状況だったんです。「これはちょっと無理かもしれない」と思いはじめた矢先、雑誌上でアシスタント募集のお知らせを見つけました

そうして、碧也先生のアシスタントをされることに

先生のお仕事場が私も縁のある土地でしたし、元々碧也先生のファンだったので、採用された時はとても嬉しかったです。「もうマンガを辞めようか」と思ったけれど、それでもマンガにはなんらかの形でずっと関わり続けたいなと思っていたので、「こうなったら自分がマンガをいったん止めて、専任のアシスタントとして働こう!」と思い、法律事務所を辞めて移住しました

え?!マンガではなく、事務職を辞められた?!当時、ご家族は何かおっしゃいましたか?

投稿していた頃は反対されていたんですけれど、ずっと反対しても私が描いているので(笑)今はものすごく応援してくれています

もう一度自分のマンガを描こう、投稿しようと思うようになるまでどれぐらいの時間がかかりましたか

2~3年はずっとアシ一本でやっていて。そのうち、自分のものが描きたくなってきました

だいぶ長い時間を専任で過ごされた。潔いですね

いや、投稿しようかなと思ったこともありましたが、どの雑誌が自分に合っているのか全然わからなかったんです。一度うまくいかなかった経験もあったので

先生のブログなどを読むと、アシスタントさん同士の仲がよいですよね。また碧也先生もブログで石原先生のことによく触れてらっしゃいました

アシとして、すごく長い方々の中に私がポンっと入ったんです。とはいえ、すぐに馴染ませてもらって。すごく楽しかったので最初は「このままアシスタントでもいいかな」と思いました。ただ、それでも徐々に「自分のマンガを描きたい」と感じるようになって。デビューしてからもしばらくはアシを勤めていました


デビューと読書体験

「LaLa」に出そうと思ったきっかけはどういった?

「夏目友人帳」が好きだったんです。緑川ゆき先生が好きで。「蛍火の杜へ」で知りました。私だけではなく、他にもそういう作家さんはいっぱいいらっしゃると思います

「LaLaDX 2018年5月号」より 「LaLaDX 2018年5月号」より

投稿者の方に「好きなマンガ家さん」をお聞きすると、緑川先生やあきづき先生のお名前がよく挙がりますね

では、お手本にしている先生は

やっぱり、一番影響を受けたのは碧也先生。アシスタントに行ったというのもありますし、ずっと憧れていたということもあります

デビュー後は読み切りが続きました。ページ数も多く、それなりの頻度で描かれてらっしゃいます。打ち合わせはどういった形で?

ずっと電話ですね。電話とFAXです。上京はほとんどしませんでした

「緑の目」表紙(『敵は王サマ』に収録) 「緑の目」表紙(『敵は王サマ』に収録)

最近ですとデータでやり取りができますから、上京してこられる方はほぼいらっしゃいません。また「LaLaDX」は読み切りの枠が決まっていて、コンペで競う形式なんです。その締め切りに向けて担当編集と作家さんとでネームを作り、締め切りまでにネームを送っていただくという

コンペの時は、締め切りの時間があるんですけれど、FAXがめちゃめちゃ混むんですよ。みんながずっと送っているので、とにかくリダイヤル、リダイヤル!(笑)

今はFAXよりデータで提出される方が増えましたか?

やっぱり主流はFAXです。でも最近はPDFで送ってくださる方も増えてきましたね。そもそもネームをデジタルで描かれる方が増えたので、そのままPDFに描き出して

過去の作品では、「涙もろいけれど芯がぶれない女の子」がよく登場しています。キャラクターの原型、モデルはあるのでしょうか

誰かをモデルにしているといったことはありませんが、私の好みでしょうか。自分が好きな感じの女の子を描いています

『偽りのフレイヤ』 1巻より 『偽りのフレイヤ』 1巻より

お好きな映画や、これまで読まれた本で印象的な作品は

荻原規子先生の『勾玉シリーズ』ですね。主人公の女の子がすごく好きで、特に2作目の『白鳥異伝』に出てくる遠子(とおこ)ちゃんが好きだったんですよ。あのシリーズが私のもっとも中心にあるのかな、と。児童小説が好きで、少女小説だと氷室冴子先生の『銀の海 金の大地』

ほかに海外の児童小説も読まれていましたか?

『大地の子エイラ』という小説が好きでした。すこし大人っぽいところもあるんですけれど、面白かった。あの作品も女の子が主人公で、たくましく生きていく。その点もすごく好きでした

昔読まれたファンタジーを作中に取り入れることは?

そのまま持ってくるということはないですけれども、作中で女の子に戦わせたり、冒険や旅をさせたりといったことには、根底に読んできたものがやはり流れているのかもと思う時はあります。あと、ゲームも好きだったんです。ロールプレイングゲームだと「ドラゴンクエスト4」が好きでした

そういった意味では、今回の作品は王道ですよね

自分でも意外なぐらいに王道です。以前の私は、それを避けていたような、「描いてはいけない」と思ってる時期がありました

『偽りのフレイヤ』 1巻より 『偽りのフレイヤ』 1巻より

弊社で描いてくださる作家さん方は、雑誌の特色的に「少しひねった、変わったもので勝負」と意識されている方が多い印象です。編集会議やネーム選考の時などにも、編集部内でそういった意見が交わされることもありまして


「偽りのフレイヤ」ができるまで

これまでの先生の作品とは、すこし違った新作です。生まれたきっかけを教えてください

実は今回、編集さんから「こんなの描いてみない?」と提案をいただいて…。私も好きな題材だったので、ワクワクしながら1話目のネームを切ったのですが、テーマが重い分、ストーリーはわかりやすく、キャラは魅力的にしたいよね、と何度も何度も話し合いを重ねました。意見がぶつかって深夜に大ゲンカになったこともあります

キャラクターの名前などは先生から?

一部のキャラクターは編集さんからの提案で決めたのですが、ふだんの私ならつけない名前で面白かったです。キャラの名前や設定はじめ、いろんなアイデアをいただきましたが、基本的には自由に好きなように描かせていただきました

一話目は60ページの予定で、先生から最初にネームをいただいたら100ページくらいありました(笑)でも、それがとっても面白くて……!それを40ページ削るのは無理だという話になり、結果として掲載は80ページに

読み切りとはだいぶ異なるページ数ですね

80ページ自体は以前にも一度やったことがありました。ただ、長いスパンでの連載というのが初めてでした。これまでは読み切りやシリーズ連載といった形が多くて。そういう意味では、まだ全然、探り探りというか、慣れていないと感じがしています。お話のヒキを大事にしようと考えてもいますが、それも「うまくできているのかな?」という不安がまだあります

見開きの使い方や、大きいコマ割も多くみられます。少年誌や青年誌っぽい作りですね。少女マンガでここまでケレン味を見せるのは珍しい気がします。80ページの効果、ということでしょうか

タップリ描かせてもらえたというのは大きかったですね。あと、もちろんまだまだの身ですが、どちらかというと自分は「絵のマンガ」かなと思っているので、絵をしっかり見てほしいと。一枚絵で強く目を引きたいということはずっと考えていて、一話に一つは見開きを入れたくて

『偽りのフレイヤ』 1巻より 『偽りのフレイヤ』 1巻より

少年マンガや青年マンガも読まれていた

はい。好きですね。少女マンガというのは心理描写を大事にするというところがありますが、モノローグなどを、私は絵で見せようとしてしまう。そのあたりを青年誌っぽくできたらいいなという意識は少しありました

石原さんの美麗な絵は本当に素敵で見ていてワクワクしますし、演出力が本当に高い。それにプラスして、良い意味で「少女マンガらしくない」要素も取り入れていけたら良いなと思っています

甲冑や剣など、今回登場するさまざまな設定について、資料集めなどは?

ファンタジーなので、そのまま書くと地味になりすぎてしまいます。ファンタジー系の要素を自分の中で集めて、アレンジして描いています

政治的な描写、やり取りも出てきます。参考にされた作品などありましたら

特定の作品を参考にしたわけではなく、今までに蓄積したものだったり、歴史好きの担当さんにもたくさん助けてもらっています。さらに勉強して、よりリアルなものを描けるようにしたいです。世界観や舞台をしっかり決めて始めた話というのはこれが初めてで、『ストレンジ ドラゴン』の時などはそんなに詳しくは決めずに、回が進むごとにだんだん付け加えていくという方法でした。自分的にも挑戦です

『偽りのフレイヤ』 1巻より 『偽りのフレイヤ』 1巻より

悪者の顔も、だいぶ良い味が出ています

どこかいいところがあるような人ばかり描いていたので、本当の悪役をこれで描けることも新鮮で、楽しいかもしれません(笑)

石原先生にとってのファンタジーとは何ですか

難しい質問ですね……。基本的にはずっとファンタジーを描いてきました。主人公の葛藤や成長を一番描きやすいのが私にとってはファンタジーかなって。もちろん、学園ものでも描けるんですけれど、障害というかハードルというか、ファンタジーの方が思う存分ドラマティックにできるというか……。そしてたぶん私の絵柄にも合っているだろうと

打ち合わせで、魔法は出さないようにしよう、という話はしました(笑)あと、ファンタジーってかけ離れた世界の話なので、そこで人の感情までファンタジーになってしまうと、自分と関係のない、一歩引いた話になってしまいます。ですから感情としての振れ幅を「この子がもし現代にいたらこういうこと思うんじゃないか」という部分をちゃんとしていかないと、お話として共感性がなくなってしまうよね、という話はしています

今作はこれまでの石原ファンからすると、かなり驚きの展開なのでは

前作がだいぶ幸せでしたからね。幸せなお話が好きだった人がどう思うかなというのは、少し気になっています。「こんな辛いお話にしてごめんね。」と思うこともありますが、涙をこらえて戦うフレイヤの姿に「辛い」以上の何かを感じてもらえるよう頑張って描いていきたいと思います

『偽りのフレイヤ』 1巻より 『偽りのフレイヤ』 1巻より

これからの展開についてうかがえる範囲で

今のところは3巻までの流れは軽くざっくり考えています

そこから以降は売り上げ次第!(笑)

「壮大な始まりでした。それで3巻で終わり」ってひどくないですか!?(笑)

大丈夫きっと売れます!

(※発売3日で緊急重版がものすごい部数かかりました!)

最後に読者の方へメッセージを!

辛い展開も多いですが、辛いだけのお話にはしないつもりです。力いっぱい頑張って描いていますので長く描けるようにどうぞ応援よろしくお願いいたします

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