Twitterで掲載したイラストをきっかけに「人と妖怪の日常」を紡ぎ始めたnohoを迎え、その世界観に迫る「マンガのとりこ」第六弾!
ある夏、突然「猫又」へ変化し妖怪となった二十歳の長寿猫・ぶちお。飼い主である人間の家族や仲間の妖怪が優しく見守る中、ぶちおは戸惑いながらも自身の変化と徐々に向きあうようになる。
夏の青空が似合うちょっと不思議な田舎町の日常、ここに登場です!
取材・文/田中香織(2018/7/13公開)
きっかけは周囲の人々
マンガや画材を初めて買いに行かれたころのことをお聞かせください
お小遣いが少なかったので、読みたいものを自分で全部揃えるというのは、気合がないとできませんでした。ですから友達から借りたり、面白いのがあるよと教えてもらったり。中学校では全巻セットで貸し借りをしていました。自転車通学だったのでえっさほいさと運んで
わかります!「このマンガ、あの子に借りたなあ」とか、思い出すことがありますよね。ちなみにドラえもんの映画もお好きでしたか?ツイッターで触れてらっしゃいました
ドラえもん、大好きです。ドラえもんで育ったようなものです。ドラえもんズも好きでした
大長編ドラえもんシリーズの映画で、初めてご覧になった作品は?
映画館デビューがそれほど早くなかったので、子供の頃は映画館でドラえもんを観たことはない気がします。テレビで流れていたものを観たり、レンタルビデオ屋さんで借りたりしました
現在、線画はペンで描かれて、色付けは線画を取り込んでのデジタル処理でしょうか
線画も彩色も全部デジタルなんです
すごい!線画もですか?
ネームから全部です。絵をちゃんと描き始めたのは小学生のころで、当時は描いたものを友達に見せたことがなくて、一人で黙々と楽しんで描いていました。ノートに落描き程度の、そんな感じで描いていたんですけれども、中学校に入ってからクラスに絵を描く子がたくさん周りにいて
類は友を呼ぶ的な(笑)
イラスト交換ノートみたいなものを作って、みんなで回しあって。自分のキャラクターを考えたり描いてみたりしていく中で、ふつふつと「人に見せるのは楽しいんだな」というのことがわかってきました
「となりの妖怪さん」1巻より
部活は美術部でしたか?
はい。中学校の頃は美術部に入りましたが、二次創作のことは美術部ではなくクラスの友達から初めて知りました。コミケもアニメイトも初めて知って、同人誌もこんな感じなんだと。そこで一応完結していたんですけれど、高校でも美術部に入りました。その顧問の先生が「自由な作風でいろいろ描いていいよ」と言ってくださったので、私もそれで自由に描いてみようと。最初に描いた一枚は油絵でしたが、その次は少し違うものを描こうと思って、そこから作風が少し変わりました
デッサンなどもなさった
それもちょろっとやるくらい(笑)本格的な「美術~!」という感じではなく、「写実的に描かなくても自由に描いていいよ」という先生でした。私が「アクリル絵の具が描きやすいです」と言ったら先生が「じゃあアクリル絵の具を用意するから、それで描きなさい」と。大きなボードに自分で紙を貼って、その時は、中央に大きな木があってその周りに人がいっぱい飛んでいる……といったような絵を描きました
いわゆる風景画ではなく、ちょっとファンタジーっぽい描写で
当時の私は割とデフォルメされた絵柄だったのですけれど、そこでもう一つ作風が変わったことがあって。それは、美術部で一緒だった同級生の子がいて、その子が私の絵を見て「あー、なんか、ちょっと下手だね」と、ズバっと一言(笑)
ええっ?!お友達とはいえ、なんとも単刀直入な……
当時、私も自分ではそんなに上手くない方だと思っていたので、言いたいことは分かったんですけれど、そんな風に、普通はハッキリと言わないじゃないですか(笑)そういわれて、「お、おう……」と思って、「じゃあ高校を卒業するまでに上手くなってやろう!」と
お!すごい。ではかえって励みになった……?
そうとも言えませんが(笑) でもその言葉で「私は下手なんだな、やっぱり」と思って
そんな強烈な言葉でも、絵を嫌いにならなかったのはなによりでした。へこんでしまうタイプの方もたぶんいらっしゃいますよね
私は私で描きたいものがあるから、それで描こうと。そこから好きなものも変わったり、先輩からの影響もあって、それでまた作風がガラッと変わりました。それまでは「シャーマンキング」的なシンプルな絵柄だったんですけれども、だんだんとリアル寄りの絵柄になっていきました
職業としてのグラフィックデザイナー
ちなみにアクリル絵の具で描かれるようになって、お友達から指摘されたあと、作風を変えてからはいかがでしたか
アクリル絵の具でずっと描いていて、それから水彩に移りました。子供の頃の夢で、当時から決めていたと思うんですけれども、大きくなったらマンガ家かイラストレーターになる、と。でも私がよく読んでいたジャンプについて、いろいろうわさ話を聞いていたので「どうやらマンガ家は大変らしいぞ」と思って、マンガ家になるのはやめようと考えました。……いま、描いてますけれど(笑)
「となりの妖怪さん」1巻より
たしかに(笑)
それで、イラストレーターになろうと。その方が簡単になれそうだと考えたんです。実際はそんなことなかったんですけれど、とりあえずイラストレーターを最終目標にして、高校の進路相談で美術の先生と話をしているうちに「デザイナーもいいな」「グラフィックデザイナーという仕事があるぞ」と知りました。「じゃあデザインの学校に行って、ついでに絵も勉強してこよう!」みたいな、半分軽い気持ちで、でも半分本気で考えた。それから専門学校に進学してデザインの基礎を学んで、グラフィックデザイナーになったんです。グラフィックデザイナーとして、10年ぐらいやりました
その間もずっと描くことは止めなかった
趣味で描いていましたし、就活用の作品集にも絵を入れていました。学校でもイラストの授業があったので、それで絵の具中心でやって。その頃、趣味の方で徐々にデジタルに移行し始めて
なるほど、そこが第3の転換点に
友達から「一緒に二次創作を描いてみない?」と声をかけてもらって
お友達の影響が大きいですね!節目に友達あり(笑)
当時やっていたのが携帯のサイトで、「デジタルの絵の方が画質が良いらしい」と気がつき、専門学校でPhotoshopを学生割で手に入れていたので、それを使ってデジタルでやってみようと
学生さん、優遇されますものね
その時、線画は手描きで色はPhotoshopで塗っていました。そこからだんだん線画もデジタルに変えていって。本業でデザインをやりながら、その中でチラシの挿絵などのイラストの仕事も頼まれるようになって「そろそろイラストレーターと名乗っていいところまできた?」と思いつつ、就職して10年が過ぎました
映画、ゲーム、ジブリ
スターウォーズをはじめとする映画がお好きなのでしょうか。ヒッチコックやほかの映画監督に関するツイートなども拝見しました
最近ハマっています。友達の影響でいろいろ観るようになりました。ここ数年のことです
小さい頃は映画をご覧になっていましたか
動物ものの映画が好きで、わりとそればかり観ていました。「ベイブ」や「ドクタードリトル」などの、動物ものばかりを
動物がお好きなんですね。でも猫を飼われたことはない?
はい。初めて飼ったのは犬です。TV番組だと「どうぶつ奇想天外」などもよく見ていました
「となりの妖怪さん」1巻より
スターウォーズはどの作品からご覧になったのでしょう
新三部作が公開されるというので「それまでなんとなく避けてきたけれど観てみよう」と思って
数年前のお話なんですね!Twitterで頻繁に絵を拝見したので、もっと以前からかと感じていました。かなり急激なハマりっぷりですね
それもまた、友達のせいなんです(笑)
またしても!お友達の存在が人生の重要なきっかけに
「自分で探す」ということをあまりしてこなかったんですよね。友達が、狙いすましたかのように入れてくるんですよ
好みのツボを心得ている方が近くにいらっしゃるっていいですね
「携帯サイトで二次創作をやろう」って言った友達も「スターウォーズを見ようぜ!」といった友達も同じ人なんですけれど、たぶん趣味が合うんですね。意見も合うしで「お前こういうの好きだろう」って言われると、ばっちりハマる(笑)そして飛び込んでいくんですけれど、いつもまんまとハマる……
ほかには、ゲームもお好きと。その入り口はどこだったのでしょう
私には兄がいるのですが、兄がプレイして途中で飽きちゃって放り投げたものを私が拾って……という感じでやるようになりました。私がハマったのは FF(ファイナルファンタジー)7です。当時、すごく話題になっていて。私はそこまでゲーマーというわけでもなかったのですが、その後もちょこちょこプレイしていく中で、音ゲーにハマりました。「ポップンミュージック」。その頃も友達と一緒にハマって、アーケードゲームだったのでゲーセンに通いました
おおっ、リアル「ハイスコアガール」!
それで、ポップンの二次創作を描いたんです
人生の節目、節目にお友達が
まさにいま、そのことに気がつきました。だいたい友達のせいですね!好みが友達でできている感があります。自らハマっていったのはジブリくらいかもしれません
ジブリ作品で最初にご覧になった作品は?
最初は「となりのトトロ」でしょうか。ディズニーとジブリ映画は親の影響です
Twitterでは、お母様の登場頻度も高いですよね。仲良しだなと
うーん、仲良いのかなあ(笑) スターウォーズの話をするようになったのは、私がハマってからです
話の提供者が多いのはいいですね
楽チンでいいですね。自分から探しに行かなくても、ツボを心得てる人たちからネタがどんどんと降ってきて罠にハマる
「となりのトトロ」のあとも、ジブリはずっとお好きでしたか
そうですね。大スクリーンで初めて観たジブリ作品は「もののけ姫」になります。そのころは小学校や公民館で観る機会がありました。スクリーンで観た「もののけ姫」の衝撃がすごくて
音なども強く印象に残る作品でした。鉄砲や、タタラ場の音。確かにもののけ姫だと「妖怪感」はありますよね
「となりのトトロ」からの「もののけ姫」は、同じ森を描いていてもだいぶ違いました。だいぶ人が死ぬし……だけど神秘性があって好きでした
怪奇や怪異物が好きだった
マンガを描き始めたのはいつくらいから?
中学生ぐらいです。二次創作を本格的にやり始めたのは専門学校生のころですね
では二次創作で描かれるまでは描いていなかった?
全然描いていませんでした。「マンガめいたもの」を描くぐらいで、ストーリーを考えて本格的に……ということはありませんでした
イラストと言うか一枚絵の方が多かった
そうですね。専門学校を卒業して、趣味もいろいろ変わり、その中でディズニーにもハマって。ディズニー関連の絵を描くようになってマンガを描くようにもなり、そのうちスターウォーズにハマって
タイトルについてですが、真っ正面から「妖怪」という単語を使われるのは珍しく感じました。やはり妖怪というキーワードだと水木先生のイメージが強くて例えば他の作品ではあやかしという言い方が用いられたり
タイトルを決めるまでにはいろいろあって、一周回ってこれになりました(笑)最初は「あやかし」なども候補に入っていたのですが、でも結局あらすじを書いていく上で「さん付け」の方が合っているかなと。「あやかし」だとかっこよすぎる気もして、最初に戻って一番シンプルなタイトルに落ち着きました
では初めにタイトルがあったわけではないんですね
担当編集(以下 編) 最初にカラス天狗さんの話を描かれて、その後猫又が出てという順番でしたよね
「妖怪」をテーマに「妖怪縛り」で描かれた、というわけではなかった
最初にカラス天狗さんの話を描いた時は、単に物語性のあるイラストを描きたくて。イラストが始まりでした。一枚絵を描いている時に場面が浮かんできたので、3ページぐらいのマンガにして載せようと思って、おまけの程度で描いてみました。その時は妖怪縛りで行くつもりはなかったんです。ただ「普通のお兄さんではつまらないな」と思って、ちょっと「違うお兄さん」にしようと。その時、「天狗が良いかな」「カラス天狗にしよう」と思いつきました
「となりの妖怪さん」1巻より
天狗がお好きだったのですか?
妖怪についてものすごく詳しいわけでも、ものすごく好きなわけでもなかったんです。でも、子供の頃からちょっとずつ触れてきて、それでキャラクターがぽっと出てきたような
影響は、日本まんが昔話からなどでしょうか。「怪談話をよく読まれていた」というつぶやきもありましたね。それは「トイレの花子さん」的なお話を?
そういったものも読みました。昔、私の世代だと「学校の七不思議」的なものが流行っていまして、そういった関連の本がたくさんありました
読まれたとき、怖くはなかった?
むしろ面白く読んでいました。「学校の怪談」の映画も好きでした。妖怪というよりは怪奇や怪異ものが好きで、そういったものをよく選んで読んでいて。「本当にいるのかなあ、怖いなあ」という気持ちではなくて、フィクションとしてちょっと面白がって読んでいた感じがありますね
妖怪もののひとつの定型として、「日常の中にまぎれた異物」として妖怪の存在が描かれることがあります。でも「となりの妖怪さん」の世界では日常にいるのが当たり前で、生活に溶け込んでいる妖怪って面白いですね
描いてく中で、キャラクターたちが普通に会話をしている映像が浮かんできました。Twitterでそれをつぶやいて描いてみたら、皆さんびっくりするほど読んでくださって。そんなに反応をいただけるとは思っていなかったんです。マンガもおまけだったし
「となりの妖怪さん」1巻より
2年ほど前のTwitterで「そろそろオリジナルのマンガを描きたいな」とつぶやかれていて、その後、アンソロジーやロサンゼルスの探偵もののマンガなども描かれていました。今とはだいぶ作風が変わってらっしゃいますが、その変遷はどういった形だったんでしょうか
基本的に、自分の中では変わった感覚はあまりなくて、作品によってテイストを変える意識が少しだけありました。探偵ものは探偵もので真面目に描いて、シリアスめに描きたいなというところがあって。妖怪さんは日常ものだから、わりと平和的なイメージで描いていました
当初はカラス天狗のジローさんが主人公になっていくのかと思いきや、徐々に猫又のぶちおの成長譚になりましたね
(編)最初にnoho先生とお打合せをしたとき、たくさんのショートショート案と、キャラクターのプロフィールカットを頂戴しました。拝見して、キャラクター設定や世界観にすごく伸びしろを感じました。ですから打ち合わせの時点で「一冊の本にまとめるのであれば、ここからもっと掘り下げて、キャラクターがそれぞれ冒険をしたり、事件を解決することで成長して、読者の読後感がちゃんと残るような本にしてみませんか」ということで詳細をすり合わせました。そのためにキャラクターの設定を表にしてまとめていただいたら、すごく真面目に取り組んでくださって!
キャラクタープロフィールカットより
それはどのあたりのお話だったのですか?
もう、ぶちおが猫又になる回の時にはお話をいただいていました
それはかなり初期ですね……!
(編)Twitter でカラス天狗のお話を読んで「この人は、凄いのでは……!」と思ってから、ずっと拝見していました。その後、猫又のお話もすごく良かったので、すぐに会いに行きました
その辺りで書籍化というか、まとめてお話にしていこうというのが見えて成長譚になっていかれた?
(編)お会いした時にはすでに、ショートショートの案がたくさんありましたよね
そうですね。打ち合わせをするとなった時に、いろいろ考えて描いてみたんです。そうしたら、ぽぽぽっと浮かんだ案があって、それをラフ画で描いてみたりしました。これは電子書籍版にも入るんですが、キャラクター表です
コマ割りとマンガの描き方への意識
「となりの妖怪さん」の中で、コマ割りは意識されましたか?
だんだんと意識するようになりました。最初はずっと4コマ形式です。二次創作も全部4コマで描いていました。「なぜ4コマで描いてるんだろう?」という記憶を遡ってみたのですが「巌窟王」というアニメがあって、「巌窟王」の監督の絵コンテがそんな感じでした。たしかアニメ雑誌で見たんですよね。絵コンテってふつう、小さいコマとその横にシーンの説明文が描いてあるイメージでしたが、映画的な比率のコマで描いてあって「めっちゃかっこいい!真似しよう」と
最初は4コマで描かれることが多く、お話が進んでいくといわゆる普通のマンガのコマ割りに近くなっています。1ページあたりのコマ数にも変化が
最初はマンガの描き方がよくわかっていなかったので、いろいろマンガを読んで、だんだんと「こうすればこう見せられるんだ」と意識して描くようになりました
「となりの妖怪さん」1巻より
研究熱心ですね
「これじゃダメだ」と思ったんです。それで「とりあえず今は真似をしてみよう」と
(編)編集としては、SNSで見てくださる読者の方々が手軽に読めるようにしたいという気持ちがありました。なので、端末からも見やすい4コマ形式で、ときどき大ゴマを入れる形がよいのではという案が当初はありましたが…先生が工夫して描いていただいたお陰で、場面に引力が生まれたように思います
お話が進むにつれ普通のマンガといいますか、1ページの中のコマ数が増えていきます。たとえば雑誌連載のマンガ家さんだと、見開きという手法を使われます。でも先生のマンガには見開きがほとんど見られません。その辺りにweb連載のマンガらしさを感じました
どっちが良かったのかなって思ったりはします。一話あたりのページ数が少ないので、その中に詰め込むにはコマを多くするしかない、という考えでした
(編)1ページが4段くらいに分かれていて、結構コマが小さめで、セリフも多めで細やかです
ちなみにふだん読まれているマンガは、紙の書籍ですか?それとも電子書籍を
私は紙派です。なんとなく、まだ紙の方が良い感じがあって。読むものは日常ものが多めです。バトルものはあまり読まなくて
とはいえ、作中ではほのぼの日常シーンだけでなく、物語としての山場、バトルシーンも描かれていました
妖怪だからとりあえず「妖怪大戦争」的なものを入れておこうという気持ちもあり。「妖怪大戦争」も好きなんです。68年版と、そのリメイク版がありますが、どっちも好きです
おしょろ様が好きでした。終わった後に、食べちゃうのも味があって。ああいった描写は、どのような資料に当たられたのでしょうか
実際の初盆に行ったことは何回もないので、かすかな記憶と話に聞いたものを思い返して、それが間違っていないかを調べて……ということはやりました。主にネットで、その後図書館へ。お話の舞台が遠州地方という静岡県の西部地方なので、「ネタになるような民話とかないかな?」と思って「遠州の民話」というタイトルで検索しました。そこで「静岡県は天狗が多いぞ」という話を知って、そうなんだと
「となりの妖怪さん」1巻より
それはカラス天狗のお話を描いた後ですか?
後ですね。カラス天狗を描こうと思ったのも、元々昔から羽根を描くのが好きだったので、羽根が生えた妖怪さんが浮かんだのだと思います
「性格とマメさと技術力」に支えられたマンガが生まれるまで
マンガの技法書でもお仕事をなさっていましたが、どういったきっかけがあったのでしょう?
元々はロサンゼルスの探偵もののマンガを描いていて、作中で年配の男性など描いていたので、それをご覧になった方からお声をかけていただきました。でも、そもそもおじさんを描けるようになったのも、友達の影響です(笑)おじさんを描いたことがまったくなかったころ、サイトを一緒にやっていた友達から「おじさんキャラを描いてくれない?」と言われて、初めて描くことになりました
きっかけがすごい!先生も、お友達の要望を素直に受け止めて描かれたんですね。でも、いきなり描くのは難しそうな。シワの入れ方だったり、肌感というか……
そうですね。でも、友達のおじさん像が明確だったんですよね
なるほど!それはなんだか、編集さんみたいですね。もう打ち合わせじゃないですか
思い返してみればたしかに、打ち合わせっぽかったですね(笑)そのころに培われたような気がします。彼女は、ちょっとリアル寄りおじさんが好きだったんですよね。たとえば俳優さん的な、ダンディーで、ナイスミドルみたいな。イメージの俳優さんの写真見せてもらって、「こういう感じ」と指示が来て
そこで培われた技術が鼻高天狗のおっちゃんの描写に!おっちゃん、かっこいいですよね
描くのが一番楽しいキャラクターなんですよ
「となりの妖怪さん」1巻より
あ、やっぱり(笑)
(編)基礎のキャラクター設定みたいなものを、一回立ててもらったことがあるんです
(綿密なキャラクター表が登場)
設定シートの一部
おおっ!これはすごい。まるでゲームの、TRPGのキャラ設定シートみたいですね。これであとはマスターを呼んできたらゲームができますね(笑)
これを描いた時は、キャラクターたちがどういう風に成長していくかがまだ固まっていなくて、曖昧な部分もあったんですけれど
二次創作をする時にも、同じように設定を決めてから描かれていましたか?
(編)私が雛形を作って、お送りして。キャラクターの設定や履歴書を作るのはわりと王道の方法なんですけれども、そこに追加したり引いたり
ほかの作家さんも、こんなに細かく描かれるものなのでしょうか?
(編)表が返ってきた時にはとてもびっくりしました。お渡しした項目は当初からこのままですが、すべてちゃんと埋めてきてくださるとは思っていませんでしたから(笑)
これを渡された時には「え?これ描くの?!」とは思いませんでしたか
いえ、むしろちょっとワクワクしちゃった(笑)
すごい!この相性の良さは、ある意味「友達枠」ですね。この表も「供給が来たから、やってみた」みたいな
(編)性格とマメさと技術力に支えられたマンガだと思っています
もはや使わない設定も、くだらないことも描いてあります。こういうのを残しておかないと、私がキャラクターの詳細を忘れてしまうんですよね。当初はマンガの描き方を知らなかったですし、ストーリーの立て方もわからなかったので
ちなみに各話のタイトルは「猫又+カタカナ」ですが、これは縛りなんでしょうか
最初は縛ってました。でも「ぶちお、東京に行く」はなぜかひらがなで。「ここだけ縛ってない、しまった!」と
妖怪の総大将も楽しいキャラクターですよね。豪快な設定で、名前も豪華な
(編)わりと初期からいましたよね
はい、初期から。山本五郎左衛門さんは、登場させる妖怪を選んだり調べている最中、「そういえば高校時代、部活で描く作品のために妖怪の資料をめちゃめちゃコピーしたぞ」「捨ててないぞ」ということを思い出して、探したら見つかって。それを喜び勇んで見ていたら、そこにいたんです。それで、出そうと
「となりの妖怪さん」1巻より
当初、twitterで連載をされるご予定は
全くありませんでした。最初はLAの探偵の話を始めるためにアカウントを作って、だんだんと仕事アカウントに変わってきたところで、デザイナーから独立してイラストレーターと名乗りました。そこで、色々イラストも上げてみようと載せてみたひとつが「カラス天狗と少女」のイラストでした
Twitterでの連載というのは、どういった感じで行われているのでしょう
(編)連載は「木曜の12時ごろ」としています。実際の準備やアップしていただくまで、先生任せになってしまっていることは心苦しいのですが……ありがとうございます
ご自身の管理がすごいですね。締め切りがあった方が描きやすいですか?
かもしれないです。自分では怠け癖があると思っているので
Twitter は読者さんの反応が可視化されますが、そのあたりについてはいかがでしょう
バズった時にはとてもびっくりしました。目に見えるものなので気にしてしまう部分もあります。でも「いっぱい見てくれたんだな」と思って、し過ぎずに感謝するくらいにとどめておきたいなと思っています
これから描いてみたいお話や、新キャラクターなどもいるのでしょうか
そうですね。あるかもしれないし、これから考えるかもしれません(笑)キャラクターを成長させたい所もあるし、バックグラウンド的なものを描きたいなという部分もあるので、ここから膨らんでいく感じがしています
noho先生描き下ろしのPOP
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